ー春の最初の月とくれば、次は春の最初の太陽ね。
ー春の最初の太陽って?
ーお針子ミミが「屋根と空しか見えない小さな部屋で私は一人ぼっち。
でも春の最初の太陽は私のもの。」って唄うの。
屋根裏部屋に住むミミが階下の貧乏詩人ロドルフォにロウソクの火を
借りに来て恋に落ちる場面よ。
プッチーニのオペラ「ボエーム」って知ってる?
ーああ、知ってる。若くって意気軒昂で、でも素っからかんの
ボエヘミアン達が繰り広げる青春絵巻だね。
ーミミとロドルフォはとってもピュアに愛し合っているだけに
ミミの病気を直す金のないロドルフォはミミから離れようとする。
ミミはミミでそういうロドルフォの心情を知って、彼を傷つけまいと
自分から別れを告げる。
最後やっと二人は再会を果たすんだけど、それはもう彼女の死の床
だったってお話ね。
ーボヘミアン達の屈託のない青春絵巻が、いよいよミミの哀れさを
際立たせて涙を絞らせる筋立てになってるね。
ー一般にそう思われてるけど私はちょっと違うな。このお話は
「春の最初の太陽」が全編の通奏低音になってると思う。
ミミの淋しさに凍てついた心を溶かしたのは、ロドルフォを
始めボヘミアン達の純粋に仲間を思いやる心根だったのよ。
貧しくて貧しくて金で仲間を幸せにできなくても、みんな
自分の持っているなけなしのもので、仲間にいい思いをさせて
やりたいと必死じゃない。
そんな仲間の思いに包まれてミミは幸せを感じながら死んでいった
と思うし、ハッピーエンドのお話なのよ。
ーなるほどね。春の最初の太陽が必要なのは青春だけじゃないな。
余談:3月、びわ湖ホール、神奈川県民ホール共同プロデュースの
「ボエーム」公演があります。
指揮 沼尻竜典、演出 アンドレアス・ホモキ
たまたまどちらのホールも水辺にあるのですが、その布陣から
春の太陽にきらめく水面を感じさせる舞台になりそうです。
別にホールの回し者ではありませんがオススメです。
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