2008年11月2日日曜日

雲隠


―もう1日、源氏ネタで行こうっと。
 毎日話題をひねり出すのは大変なんだから。
―そうなの? 結構スイスイ出てくるのかと思ってたわ。
 で、今日は何の話?
―源氏五十四帖の中に名前だけがあって中身のない巻が
 あるのを知ってる?
―知らない。
―「雲隠」という巻なんだけど、この巻では光源氏の死を
 描いてるんだよね。並の作者だったら、主人公の死という
 クライマックスだから、盛り上げに盛り上げようとするだろう。
 「雲隠」って題だけ見せて中身を何にも書かなかった紫式部は
 本当にすごいと思う。
 絵巻物でよくあるだろ、画面を金斗雲みたいなので覆って
 その次の場面は前の場面とは全く別の話になっちゃうヤツ。
 これを物語でやってんだよ。事の仔細は読者のみなさん
 どうぞ想像の羽をのばして、ご自分で考えてくださいって。
 とってもクールだと思わないか?
―なるほど。中身がないんじゃなくって、無限の中身を持ってる
 ってことね。かっこいいなぁ。

蛇足のお断り:
「雲隠」に中身がない理由については諸説あります。念のため。

2008年11月1日土曜日

源氏物語千年紀



―Googleトップに行ったら、ロゴに
 何かイメージが貼り付いていて

 訳がわからずクリックしたら
 「源氏物語」の検索ページ
 だったんでびっくりしたよ。
―ちょうど1000年前の11月1日、「紫式部日記」の記事に
 「源氏物語」のことが出てくるそうなのね。
 だから今年は「源氏物語千年紀」ってにぎやかじゃない。
―オレには「源氏」の世界が1000年も昔のこととはとうてい
 思えないな。着ているものだって、住んでいる建物だって
 飛び切りぜいたくだし、あんな生活、1000年先だって
 無理じゃないか。完全にファンタジーの世界だね。
―当時の貴族は日本中の富を独占していたからね。
 だからあんな優雅に生活できたのよ。
―考えてもみなよ。いくら時間と富を持て余してたって、男と女の
 間であんな微妙な心のやりとりが出来るってことにならないよ。
 自然、歴史、歌、あらゆることに通じてないとできないじゃないか。
 それを登場人物みんなが普通にやってるってことが
 なんか、別世界の人たちだって気がする。
―そうねぇ、今の私たち、ケータイで「アンタなんか死んじまえ!」
 とかやってんだもんね。

2008年10月31日金曜日

秋のバラ


ー秋のバラは春と違って、花が小ぶりなんだよ。
 株は大きくなってるから、ひょろっと伸びてハラハラ咲いてる
 感じでちょっとはかなげかな。でも花の色は濃いんだ。
ーへぇ、同じ株でも春とは違うんだ。
ー全然違うよ。春は見た目も香りもゴージャスで、あらゆる虫たちを
 誘い込んで、何が何でも子孫を作ってやる!みたいなエネルギーが
 あるけど、秋はひっそり咲いてる感じだね。
ー秋は子孫残すために咲くわけじゃないの?
ー違うと思う。秋は虫たちもいないし、冬のことを考えると
 体力温存のため花は咲かさないほうがいいんだよね。
ーじゃ、なんで咲くんだ?
ー私は自分の存在確認のため咲くんだと思う。
 一度自分のためだけに咲いて、ああ、私にも咲けたんだって
 その記憶があるから、厳しい冬を乗り切れるんじゃないかなぁ。
ーハハハ、バラに存在確認なんてあるかよ。
 秋にはみんな哲学者になっちゃうね。

2008年10月30日木曜日

WBC


ーWBCの監督が原さんに決まったね。
ーいい人に決まったと思うよ。いつまでも長島、王(+星野?)の
 時代じゃないもんな。
ー今度は珍しく読売がすんなり出したじゃないか。
 これにはちょっとびっくりしたね。
ーもっとすったもんだするかと思ったけどね。
 何と言ってもイチローの一声が大きかったんじゃないか。
 あれで流れががらっと変わったからね。
ー北京で勝てなかったのはイチローがいなかったからって声も多いし
 大したヤツだよ。そのうち日本球界のドンになりそうだね。
ーアメリカが放っておくかな?

2008年10月29日水曜日

居眠り


ー電車で座ると、ついつい居眠りしちゃわないか。
ー特に今の季節は電車の居眠りに最高だもんな。
ーオレ、一回、ケータイでメール打ってて居眠りしちゃってさ
 気が付いたらケータイが落っこちて転がってったんだよ。
 ちょっと恥ずかしかったぜ。
ーそんなのかわいいもんだよ。
 東海道線のボックス席だと眠りの深度が深くってさ
 知らないうちにヨダレ垂らしてたんだよ。
 首筋伝ってんのがわかってさ、目つむりながら様子伺って
 このまま寝たふりするか、何気に手でぬぐうか、
 素知らぬ顔してハンカチでぬぐうか、すごい葛藤だった。
ーオマエ、それは惚けすぎだよ。

2008年10月28日火曜日

街角書道


昨27日は「文字・活字文化の日」でもあるそうです。
それで思い出すのは、昨年初めて行った北京で目にした街角書道。
街角で、ほうきのようなものを持ったおじさんが何やら歩道を
こすりつけています。
不審に思って近寄ると、持っているのは腰くらいまで長さのある
大きな筆、側に水を入れたバケツがあり、歩道のマス目を利用して
書を書いているのです。
書かれたものを見るとこれが上手い!実に見事です。
路面書道を撮ったブログがあったので見てみてください。
水が墨代わりなので、書かれた字はしばらくすると蒸発しますが
おじさんはその上にまた別の字を書いていきます。
本人は楽しそうだし、こちらも見ていて大変気持ちがいい。
その後わかったのですが、あちこちの街角や公園で
結構たくさんの人が同じようなパフォーマンスをしています。
大体がおじさんですが、まわりに人だかりができ、あれやこれや
批評し合ってにぎやかです。
いかにも「書の国」の文化の奥深さを感じさせます。
もう一つの「書の国」日本でも、街角書道、はやらないかな?
日中街角書道コンクールとかあれば面白そうだけど。
ちなみに今まで「書道」と書いてきましたが、中国では「書法」です。
「道」と「法」、ここにも日中の文化の違いが端的に現れている
ように思いますが、いかがでしょう。

2008年10月27日月曜日

アフガニスタンの農村から


今日から読書週間です。「週間」といいながら実は文化の日を中心に
前後一週間づつ、あわせて二週間が「読書週間」なのだそうです。
今度調べて初めて知りました。お恥ずかしい。
という訳で今日は小さな本のことを書きます。
本の題名は「アフガニスタンの農村から」
大野盛雄著、岩波新書(青版)、1971年発行、
残念ながら現在Amazonに在庫はないようです。
今から30年ちょっと前、大学の文化人類学の課題で読んだもので
著者がアフガニスタンで行ったフィールドワークの記録です。
その後頭の中には、厳しい自然環境の中でたくましく生きる農民の
個性的なイメージだけが残り、中身はすっかり忘れていたのですが
この夏の痛ましい出来事をきっかけに再度読んでみました。
改めて感じたのは、当時(ソ連侵攻前)のアフガニスタンでは
国家というよりむしろ部族共同社会の中で、農民達は貧しくとも
古来からの秩序環境に守られて、自分のポジションをしっかり守り
明日への不安を感ずることなく生活できていたということです。
面白い条があって、日本から入った調査隊を見て、村人たちが
口々に村長に確認したことが3つあったといいます。
1.あの者たちは書物(=聖典)を持った人間なのか。
2.酒は飲むか。
3.羊をたくさん連れた民か。
この質問は彼らが重視する価値をストレートに反映しています。
聖典を忠実に守るような人間でないと信用できない。酒を飲んで
堕落した生活を送っているような人間ではだめだ。羊(=経済力)を
しっかり持っていることも大事だ。
このような価値観を持った人たちの生活がどのようなものであったか
容易に想像できます。そしてこのような価値観で結ばれた人たちが
共同で営む社会だったから、厳しい自然環境の中で生活が成り立って
きたともいえます。
その後ソ連が侵攻し、長い内戦があり、アメリカの標的にされ
この本の中に生きていた農民達にどんな未来が待ち受けていたのかと
考えると胸が痛みます。
どんな争い、紛争、戦争でも、それに巻き込まれた社会の秩序は
破壊され、人間は裸になって動物にされてしまう、
平和な社会の生き生きした人間群像のレポートであるだけに
今読むとそのことを強く感じさせる本となっていました。

2008年10月26日日曜日

ハロウィン・パーティ


ーハロウィンの日に、ケバケバしく仮装した外国人の一団が大挙
 電車に乗り込んできて、中で大騒ぎするってことがあるそうだ。
 日本人も結構混じってるみたいだけど、ホントに周りは
 大迷惑だよ。
ー彼らは自分達の国で同じようなことをするのかな?
 日本人は何でも大目に見てくれるって、
 なめられてるんじゃないのか。
ーそもそも自分達とは直接関係のない行事に、
 日本人も浮かれ過ぎなんだよ。
 ま、そんなことを言っても仕方がないから、
 老日本人としては31日、変な一団を見かけたら逃げるが勝ち、
 巻き込まれないようにしないとな。

2008年10月25日土曜日

シャッフル


ー最近、iPodの曲をシャッフルさせて聴いてんだけど、これが
 結構いけるんだよ。
 昔入れるだけ入れて忘れてた曲がひょっと出てきたりすると
 当時の思い出にふけったり、新しくはまったりして、面白いぜ。
ーiPodの曲だったらいいけど、借入証書をシャッフルされちゃ
 たまんないよ。
ー借入証書をシャッフルって?
ーサブプライムだよ。あれって結局住宅ローン債権を細かく分けて
 しかもその他の債権も一緒くたにして証券化しちゃったんだろ。
 それで最先端の金融工学を駆使した商品だとか、
 究極のリスク分散だとかもてはやしてたわけだ。
 実は究極のリスク拡散だったんだけどな。
 まともな債権に問題債権がシャッフルされちゃって、全部が全部
 問題債権に化けちゃったんだから、ひどい話だよ。
ーそれこそ連中はシャッフルした音楽を聴きながら、こんなふざけた
 商品を作ったんじゃないか?

2008年10月24日金曜日

アリの生活


ーつい最近まで、日本はいざなぎ越えだ、戦後最長の景気拡大だって
 浮かれてたよな。
 オレ達にはそんな実感、全然なかったけどさ。
ー経済を数字で見るとそうだったんだろ。
 ただバブルのトラウマで、どの企業も自己資本増強に血道を上げて
 来たからね。「厳しい国際競争に勝ち残れない。」って言うのを
 殺し文句に、従業員の給料は全く上げてないんだ。
 むしろ「アウトソース」なんてことばを隠れ蓑にして、賃金をどんどん
 切り詰めてきたからね。
 給料上がらないは、リストラされるんじゃないかって
 恐怖感あるはじゃ、お金なんて使ってられないよ。
ーお年寄りや年金生活者だってひどいもんだよ。
 もう何年も実質金利ゼロみたいなもんだから、預金してたって
 何の足しにもならない。挙げ句、悪徳業者の投資話に乗せられて
 スッピンにされてしまう。ひどすぎないか。
ーで、本来オレ達が使えるはずだったお金は、企業が直接海外投資
 したり、利回りのいい海外債券投資に使ってきたわけだ。
 その上、海外の投資ファンドも金利実質ゼロの円をバンバン借りて
 高利回りの債券投資で大儲けだったからね。
 その中にはサブプライム組み込みなんてのが一杯あったはずだよ。
ー結局オレ達が使えなかったお金は、回り回ってキリギリスの生活を
 支えてたってわけだ。しかもそのツケはてきめんに食らってる。
 全く報われないじゃないか。
 富の再分配が政治の最大の役割って聞いたことあるけど
 少なくともオレ達には政治がその役割を果たしてきたとは
 思えないよな。