2010年12月5日日曜日

赤い鳥


ー赤い鳥、小鳥、なぜなぜ赤い、赤い実を食べた
 って歌があるけど、赤い実を食べたって赤い鳥にはならないよな。
ーつまんないこと言わないで!
 今の季節、赤い実をつける木が多いから、鳥たちが集まって
 ついばんでると、赤く染まってるように見えるじゃない。
ー確かにこの季節、赤い実をつけてる木が目につくね。
 家の庭でも南天と万両が赤い実をたくさんつけてるよ。
ーサンザシに赤い実がたわわについてるのはゴージャスだし
 葉が落ちたハナミズキに赤い実が残ってるのも風情があるわね。
 それにクリスマスとなれば、なんといってもヒイラギだし。
ー実が赤いのはやっぱり鳥の目につきやすくするためかな。
 鳥に食べてもらって、種を遠くに運んでもらうっていう。
ーそうでしょうね。でも実を赤くすれば目立って鳥が食べて
 くれるって、赤い実の木が考えたわけじゃなくて、
 何億年もかけた命の営みの中で、赤い実と鳥の相互連関が
 出来上がってきたわけでしょ。
 生命の連なりの不思議を思えば、赤い実を食べて赤い鳥に
 なったって歌いたくもなるんじゃない。
 

2010年11月23日火曜日

春を待つ


ー今日やっと春の花の球根を植え込んだよ。
ー何を植えたの?
ー赤いチューリップ、空色と黄色のアイリス、それにアネモネと
 フリージア。
ーなかなか彩りが豊かだわね。
ープランターに土を作り、肥料を混ぜ込んで球根を置いていき
 土をかぶせる。
 今は何もない土だけのプランターだけど、そんな作業をしていると
 そこに色どり豊かな花が咲いているのが想像できるんだ。
 今は何も見えないけど、これから寒さの中で芽を出し、初々しい
 緑の中に花芽を見つけ、そして春の陽光の中で花開く。
 その移ろいを思い浮かべるだけで浮き浮きした楽しい気分に
 なれるんだ。
ーそうよねぇ。今は何も見えなくてもそこに何かが育ってるって
 信じられれば希望が持てるよねぇ。
 今の政治は何も見えないし何かが育ってるって気配も感じられない。
 嫌気がさすのも無理ないよね。

2010年11月14日日曜日

厳戒都市 ヨコハマ


ー13日、14日って横浜都心の警備はすごかったよ。
ー空にはずいぶん高いところを、ヘリが何機も旋回したり
 ホバリングしてたりして、うるさかったわね。
 あれは、突っ込んでくる航空機がないか監視してたのかな。
ーJRの駅では一ヶ月ほど前から警官がホームとか改札とか
 巡回してたけど、横浜駅のお巡りさんは「岐阜県警」の
 ジャケットを着てたね。
ーAPECが始まると、お巡りさんも配置換えされたのか、横浜駅は
 山梨県警と滋賀県警に変わってたわよ。
ー山下公園周辺は愛知県警と秋田県警のテリトリーみたいだった。
 ランドマークプラザは熊本県警の警官が陣取ってたしね。
ー日本全国ほぼすべての県警から動員されてたから、各県警
 テリトリーマップが作れたんじゃないかしら。
ーお巡りさんだけじゃないよ。警察車両だってあらゆるタイプの
 車が日本じゅうから集まって、警察車両見本市って感じ
 だったからね。目抜き通りはあちこちに赤色灯をくるくる
 回した車が配置されて、映画のシーン見てるようだった。
ーAPECの期間一週間だから我慢できるけど、いつもこんなじゃ
 息がつまっちゃうよ。
ー日本全国からこれだけ動員かけて、完璧に役割分担して
 整然と警備するって、ものすごい組織力がないと出来ないことだよ。
ー今まで議論ばかりして生きてきた人たちが、いきなりこれだけの
 組織を動かせるかって、それは無理なんじゃないかしら。
ー官僚の統治能力が確固としたものでないと、いくら政治主導って
 言ったって絵に描いた餅でしかないね。

2010年10月31日日曜日

諸聖人の国


ー今年はハロウィンの仮装行列も台風で散々だったみたいだね。
ー楽しみにしていたのにがっかりの人も多かったみたい。
ーでもハロウィンって、いつの間に日本の年中行事として
 こんなに定着しちゃったんだろ。
 しかも本来の宗教的意味なんかどこ吹く風だから
 眉ひそめる人もいるよね。
ー堅いこと言わなくてもいいんじゃない。
 本場でも宗教的にどうのこうのって言うより、お祭りの
 ノリなんだから。クリスマスにしたってバレンタインに
 したって暮らしに彩りを加えるアクセントだって考えれば
 いいのよ。
ー考えてみれば、古代日本では仏教は金ぴかの舶来宗教だった
 のに、いつのまにか普段の生活に根付いて土着の宗教みたいに
 なってる。一方で古来の神道もそのままに信じられてきてる。
 その後もいろんな宗教の神さまが入ってきたけど、政治的に
 弾圧されたのを別にすれば大体大らかに受け入れられてきた。
 日本人にとっていろんな神さまはご近所のいろんな隣人と
 一緒なんだよ。いろんな神さまと一緒に暮らしていて
 違和感がない。
 これぞ先進の社会生活モデルと言ってもいいんじゃないかな。
 世界中の人がこんな感覚で暮らしてれば、世の中ずいぶん
 平和になると思うよ。

2010年10月11日月曜日

指揮者の手


ー金井画廊で今開催されている個展に、蔡さんは
 "Conductor"という作品を出品してるわね。
ーいつもジャズプレイヤーを描いた作品は出品しているけれど、
 クラシックの指揮者を描いた作品は初めてじゃないかな。
ー日本でも人気が高い、ポーランドの長老指揮者がモデル
 だって聞いたけど。
ー音に集中している顔の表情と、早いタッチで描かれた体の
 背景から浮かび上がった指揮棒と手が印象的だね。
ー特に指のダイナミックな動きが生き生き描かれているのが
 魅力的じゃない。
ー流麗な動きの一瞬を捉えた指先から、律動感溢れる音が
 次々聞こえてきそうだね。
 楽興の時がこの一枚に見事に表現されていると思うよ。

2010年9月26日日曜日

蔡國華展@金井画廊ご案内


毎年秋恒例、京橋・金井画廊で蔡國華展が今年も開かれます。

 * 2010年10月6日(水)〜 16日(土)
   11:00 〜 19:00 (会期中無休、最終日17時まで)

 * 金井画廊(3F)、ドゥ画廊 (1F) 同時開催
   東京都中央区京橋2-6-8 仲通りビル 
   電話 03-5250-0860

今年5月に取材で訪れたモロッコの風景や人物を中心に、
<いのち>をテーマに追究した作品が並びます。
穏やかな秋の日、作品をご覧になって是非<いのち>の
暖かさに包まれたひと時をお過ごしください。

  <地図>

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2010年9月20日月曜日

秋日和


ー今年は秋がくるんだろうか、って心配になるほど暑い日が続いたけど
 やっと秋めいてきたね。
ー一日大雨が降って、空気がちょっとだけ入れ替わった気がするけど
 今年は秋雨前線が登場して、北の高気圧が秋の冷気を運んでくる
 って感じじゃないわね。夏の高気圧が少しずつ、少しずつ弱まって
 引き潮のように、暑さが行ったり来たりしながら、徐々に後退してる
 感じだね。まだ夏って気分を残してるよ。
ーでも空にはうろこ雲が浮かぶ日もあるし、風向きも変わったし
 やっぱり秋は秋だよ。
 そういえば今年はサンマが不漁で高値になるって出てたけど
 どうなのかな?
ースーパーじゃサンマ一匹99円で売ってたわよ。
 実際にはそれほどでもないんじゃないかな。
ーサンマ食べるの面倒だから、みんなあまり手を出さなくなった
 って側面もあるかもしれないね。
ーただもうお彼岸なのに、彼岸花の花芽はまだ出てこないわよ。
 自然のサイクルに少しずつ狂いが生じているのは確かじゃ
 ないかしら。

2010年9月5日日曜日

展覧会のご案内


蔡さんを含む、在日中国人作家4人の展覧会が
長野県東御市の梅野記念絵画館で開かれています。

視点ー在日中国人作家4人展
 9月4日(土)〜 10月24日(日)

蔡さんの作品では「旅人」シリーズや「何来何去」の一部など
蔡さんの本領が最も発揮された作品が展示されています。

こちらの美術館は明神池のほとりの緑の中に建っており
ロビーから眺める浅間連峰の風景はまさに絶景です。

まだまだ秋とはいいかねる暑い日が続きますが、
少し足を伸ばされて、爽やかな空気の中、ARTと自然の
コラボレーションを是非お楽しみください。

2010年8月22日日曜日

亀の甲


ーウチに今年104歳になるばあさんがいるんだけどさ。
ー知らないうちにどこかへ出て行ったって話じゃないでしょうね。
ーいやいや、98歳の時に京都からこちらへ移り住んだんだ。
 それまで京都を離れたことなかったんだけどね。
ーそんな歳とってから初めてのところに来て大丈夫だったの?
ー元気、元気、京都に比べてこっちは田舎やなぁ、とか言ってる。
 図太いばあさんだよ。
ー亀の甲より年の功、っていうからお年寄りならではの知恵が
 あるんじゃないの。
ーいや、知恵なんてほとんどない。わがままなだけ。言いたいこと
 言って、食べたいもの食べてる。
ーすごいおばあさんじゃない。
ーでも思うんだけど、老人に別に年の功なんていらないんだよ。
 亀の甲だけで充分。
ーって言うと?
ー亀の甲って何の役にも立たないけど、それ見てるだけで
 何か生命の不思議さ、おもしろさを感じるじゃないか。
 役に立つか、立たないかだけで判断される世の中なんてつまらない。
 ウチのばあさん見てると、生きてるってそれだけのことが面白い
 って感じられるもん。そしてその生命を自分が受け継いでいる
 ってことの不思議。それって「生きる」っていう上で一番
 大事な根本の感覚だと思うよ。

2010年8月15日日曜日

あったはずの未来


ー先日、靖国神社にお参りしてついでに遊就館も見てきたよ。
ー遊就館って明治以降、日本が行ってきた戦争にまつわる資料が
 展示されているところでしょう。戦争を批判する立場の人たち
 からは評判の悪い施設よね。
ー確かに時々の戦争で華々しい戦果をあげた将兵たちの武勇伝が
 大々的に語られているし、武器も爆撃機、人間魚雷から銃弾に
 いたるまで一杯展示してある。過去の日本軍がいかに勇敢
 だったか、そこにがすごく強調されて展示されてるからね。
ー何が一番印象的だったの?
ー太平洋戦争のところまでは、戦争を美化するような内容も
 あって違和感を感じる部分もあったけど、太平洋戦争の
 ところでは兵士が実際に使っていた飯ごうやヘルメット
 そういう身近な遺品が展示してあって、戦場での毎日を
 想像すると胸つまるものがあった。
ー生きるか死ぬかの戦場でも、生き続けるための日常は
 しのいでいくしかないんだものね。
ーそれからやはりいろんな人の遺書、特に特攻隊員の遺書
 を読んでると、こみあげてくるものを感じるよ。
 でもなんといっても圧巻はこの戦争で亡くなった、
 何千(何万?)という人たちの小さな顔写真がパネルにはって
 展示されてあるんだ。もうあまり多くの数の小さな写真だから
 何も見ず通過してしまいそうになるけど、でもよく見てみると
 ほとんどがまだいたいけないといってもいいくらいの若者で
 みんなそれぞれ、まじめくさったり、はにかんだり、もう様々
 だけどとってもいい顔をしてるんだよ。
 恋人と語らったり、家族団らんでくつろいだり、ひとりひとり
 にその人だけに用意された未来があったはずなのに、そんな
 何万もの未来を一網打尽に奪ってしまった…
 あったはずの未来に対して、ぼくらは写真の顔ひとりひとりに
 「ごめんなさい」って頭を下げて回らないといけないんじゃ
 ないのかな。