2010年4月30日金曜日

十一人の怒れる市民


ー小沢氏に検察審査会が「起訴相当」の議決を出したね。
ーJR西の事故もそうだし、最近検察審査会がにわかに脚光を
 浴びてるわね。
ー今回は審査員11人全員一致の議決だからね、重い議決だよ。
ー「市民目線からは許し難い」って、ずいぶん突っ込んだこと
 言ってるね。
ーそれで思い出したけど、昔「十二人の怒れる男」って
 アメリカ映画があって、陪審員誰も有罪だと思っているのに
 たったひとりの陪審員が無罪を主張し、手に汗握る議論が
 繰り広げられた末、結局無罪って結論になるんだけどね。
ーずいぶん話が飛んじゃったわね。
ーいや、今回たまたまこの審査会のメンバーに選ばれてしまった
 人がどう感じ、審査会の中でどんな議論が繰り広げられたか
 あれこれ考えてしまったんだ。
ーフツーの人は審査員に選任されただけでげんなりするんじゃない。
 しかもこんなやっかいな案件担当になっちゃったら
 身の不幸を嘆くでしょうね。
ーそりゃ小沢さんの事件を許し難いと思う人もいたろうけど
 どうでもいいと思う人もいたろうし、事件とは関係ないと
 考える人もいたと思うんだよね。
ー確かに11人もいればそうでしょうね。
ー最初は自分の仕事に乗り気じゃなかったかもしれないけど
 自分たちでいろいろ調べるこれは大変だってことに
 なったんじゃないかな。それこそ映画のように白熱の
 議論が繰り広げられ、結果として全員一致の議決になった
 んだと思う。どんな議論が繰り広げられたか、これも
 映画にしてほしいくらいだね。
ー民主党議員の中には、この議決はマスコミ論調にミスリード
 されたものって言い募ってる人もいるみたいね。
ー11人全員一致というのは、みんなよほどいい加減だったか
 よほど真剣に渡り合ったか、どちらかしかありえないよ。
 ことの重大性を考えれば、たまたま審査員に選ばれた人たちは
 結果として自分の全人格をかけてことに当たったと思う。
 この審査員の人たちの真剣さ、覚悟のかけらでもそんなことを
 言っている民主党議員にあれば、まだ救われるんだけどね。

2010年4月18日日曜日

言霊の幸ふ国


ーさすが鳩山さんは「言霊の幸ふ国」の首相だけのことはあるよ。
ー何だよ、言ってることがわかんないよ。
ー普天間移設5月末までに決着、決着って言い続けてるじゃないか。
 私には腹案があるって。
ーもう今となっては無理とみんな思ってるよな。
ーオレもあれだけ言い続けているから、何かあっと驚く策があるに
 違いないと思ってたんだ。
 で、最近鳩山さんのあっと驚く策はこれだ!ってわかったんだ。
ー何だよ。
ー「言霊」だよ「言霊」。日本は「言霊の幸ふ国」じゃないか。
 何の裏付けがなくても「実現します、実現します。」って
 言い続けていれば実現するんだよ。
ーあほらし、おまえマジで言ってるの?
ーいや、そりゃオレだってあほらしと思うよ。
 でも鳩山さん自身はマジそう考えてるとしか思えないよ。
 中身がないのに覚悟をもって臨んでいます、信じてください
 って言い続けてるんだから。
ー「言霊」も安売りされたもんだな。

2010年4月11日日曜日

御室の桜


ー小さい頃仁和寺の側に住んでいた。
ー仁和寺ってあの世界遺産の?
ー今じゃすっかり有名になったけど、あの頃は人もあんまり
 来なくて、のどかなお寺だった。
 セミ採りやらかくれんぼうやら格好の遊び場所で
 毎日のように行ってたよ。
ー随分ぜいたくな遊び場所だわね。
ーそんな立派なお寺だとはこれっぽっちも思わなかったし
 出入り自由だったからね。
 でも一年のうち桜の季節だけは入苑料取られるから
 あまり行かなかったなぁ。
ー「御室の桜」ね、JR東海のCMでやってるよね。
ーその時だけは大勢人がきて、緋毛氈の床几が出たりゴザ敷いたり
 してお花見するんだけど、背が低くて八重の桜だから
 桜の雲の中で花と戯れてるって感じになるね。
ー雅でにぎやかそうだわね。
ーその中でも特に楽しそうな人たちがいて、忘れられないんだけど
 チマチョゴリで着飾った人たちなんだ。
ーへぇ、朝鮮の人たちも一緒にお花見してたの?
ーゴザの上で男性は唄って女性が舞ってたりするんだけど、
 チマチョゴリのスカートって裾広がりで色鮮やかにくるくる
 回っていると桜と呼応し合ってすごくきれいなんだ。
ーそうでしょうね、光景が目に浮かぶわ。
ーきれいだなぁ、と思って眺めてるんだけど、でも一方でこの人たちは
 一体どこから来たんだろうって不思議で仕方がなかった。
ーというと?
ーもちろん小学生でも朝鮮の人だというのはわかるんだけど、こんなに
 たくさんの人が旅行で来てるわけでもなさそうだし、自分の心の
 中では文字通り忽然と出現した人たちがにぎやかに花見を
 楽しんでるって感じたんだ。
ーふう〜ん。
ーもう少し大きくなって、この人たちは日本社会の中で普段は
 日本人として生活している朝鮮出自の人たちなんだって
 わかったけどね。それだけに年一回花見というハレの日は
 民族のアイデンティティーを心から楽しむ日だったんだろうと
 合点がいった。御室の桜はそれに相応しい舞台だったんだろうね。