2011年5月22日日曜日

「までい」の村

ー八重洲にある福島県の観光交流館で
 「幻の酒」になるかもしれない大吟醸
 「飯館」を売り出すって聞いたから
 一にも二にも買いに行かなくちゃって、
 買って来たよ。
ーよかったね、買えて。
ーそのとき飯館村の観光パンフあった
 からもらって来た。ほら、これ。
ー健康優良児2人って感じだね。見るから
 にほのぼのとしたいい村!
ーこの地に「までい」ってことばがある
 らしい。中にこう書いてある。
 ["までい"とは私たちの暮らしに古く
 から寄り添う言葉。「時間をかけて」
 「手間ひま惜しまず」「丁寧に」
 「じっくりと」…といった意味が
 あります。来るたびに味わい深まる
 飯舘村で"までい"の心を感じて
 ください。]
ーなるほど、この子たちも「までい」に育てられたんだね。
 きっとお米もお酒も「までい」に作られ、牛たちも「までい」に
 世話されてきたんだ。
ー何代にもわたって「までい」の村が作られてきたんだよ。
 それが今度の一事でもって突然村を出て行かなきゃならなく
 なって…
ーつらいよね。
ーそのことに、ぼくらが無意識にしろ片棒をかついでたって
 考えるのはもっとつらい。
ー自粛はやめよう、って言うけど、この子たちにつらい思いを
 させている何万分の一かは自分たちにも責任があると思うと
 無邪気に元の日常には戻れないわね。
ー少なくともこの子たちが、今までどおり「までい」の村で
 「までい」の生活を取り戻せるまで、ぼくたちはその痛みを
 忘れるわけにはいかないし、自分たちの生活も変えて
 いかないとね。