2011年1月15日土曜日

タイガーマスクの贈り物


ー日本各地で伊達直人を名乗って新入生にランドセルが
 届けられてるって話題になってるね。
ー暗い話ばかり多い中で、久しぶりに心がぽっと明るくなる話だわね。
ータイガーマスクってぼくらの世代のヒーローだったから、贈り主は
 5〜60代の人が多いんじゃないかな。
ー自分の名を明かさずに、人知れず贈るなんて日本人らしい謙遜の
 美徳を感じるわね。
ー最初に伊達直人を名乗って贈った人の善意は本物だと思うけど、
 そのあとの展開はなんかひっかかるんだよね。
 無条件にはやし立てて喜んでていいのかなぁ、って。
ーあら、ひねくれてるわね。マスコミの報道を通じて善意の輪が
 大きくなっていくんだから喜ばしいことじゃない。
ー素直に喜んでればいいのかもしれないけど、基本的に寄付とかは
 自分の思い、目的があって、それを相手にちゃんと名乗って
 伝えてこそ、相手も寄付された意味を正しく理解できるし、自分も
 自分の寄付が正しく使われているかに責任を持とう、って気持ちに
 なるもんだよ。お互いに意味がわかって納得できあえれば
 これは継続してやって行こうってことにもなるしね。
ー難しいこというわね。そんな大げさなことじゃなくて、みんな
 ちょっといいことしたいだけなんだからそれでいいじゃない。
ーもちろんそれはそれでいい。ただこれが素晴らしいことだって
 あんまりはやし立てるのはどうかって思うんだ。
 匿名で自分の責任を問われないところでムードに乗っかっちゃって
 動く心理が強くなってしまうと、あらぬ方向にあれよあれよと
 流されちゃうんじゃないかと怖いじゃないか。

2011年1月2日日曜日

未来への手紙


アンジェラ•アキさんが紅白歌合戦で歌った「輝く人」、この歌は
一昨年彼女が紅白で歌った「手紙〜15の君へ〜」の続編だと
紹介されていました。

”今 負けないで 泣かないで 消えてしまいそうな時は
自分の声を信じ歩けばいいの”
こうして歩き続けた人だけが「輝く人」になるんだよ、と
励ましてくれているのだと思います。

今年元旦の毎日新聞に驚くべきうれしい記事が掲載されました。
アウンサンスーチーさんの「ビルマからの手紙」連載が再開
されるというのです。

記事によれば「ビルマからの手紙」は1995年11月〜96年12月まで
52回連載された後中断、97年1月に再開され16回連載された後
再び98年6月に中断されました。

その後長い自宅軟禁の時を経て、昨年11月にスーチーさんは
解放され、まさかと思えた「手紙」の寄稿が再開されることに
なったのです。こんなに嬉しいことはありません。

90年代に連載された「手紙」は、私にとって他のどんな記事
よりも記憶に残る連載記事でした。
中心のトピックは彼女と、彼女を中心に結成された
「国民民主連盟」の政治的活動に関することですが
その政治的主張を声高にイデオローグの立場から言い立てる
のではなく、生活者として常に民衆の視線から政治が
語られていたのが印象的でした。

「手紙」にはいつも人々の日常生活のちょっとしたいざこざや
喜びごとがユーモアを持って描かれ、ビルマの人たちの
生活が極く身近に感じられたものです。
「手紙」に描かれたビルマの水掛け祭りのはじけるような
楽しさや、仏教に対する敬虔な思いは忘れがたい美しい印象を
残しています。

彼女がユーモアに溢れ、静かに寛容に民衆の生活に寄り添う
形で、たゆまずひるまずぶれずビルマの民主化を発信し続けた
からこそ、世界は彼女を支援しつづけたのだと思います。

自分を信じ、今自分のできることを精一杯やる、それが未来を
開いていく道であることを、彼女の手紙は教えてくれます。

残念ながら、再開された「手紙」の日本語訳は新聞でしか
読めませんが、オリジナル(英語)はこちらに掲載されています。

スーチーさんが、「亡き夫がこよなく愛し、色あせない英知として
私も胸にしまっている」と言って紹介している詩を最後に引用
させていただきます。

 昨日はただの夢であり
 明日は予感にすぎない
 今日をしっかり生きたらば
 昨日という日は理想となり
 明日という日に希望を開く
 だから今日と精いっぱい向き合おう

   インドの詩人カーリダーサ作「暁への讃歌」より