2009年12月14日月曜日

堂々巡り


ーおい、ボーナス出たか?
ーまだだよ。今年は遅いし半分に減らされちまうんだ。
ーきっとリストラされないだけマシだろ、って言い分なんだよ、
 経営は。
ー手を付けやすいボーナスをまず減らして、次は給料って
 算段なんだろ。
ーそもそもグローバル化、グローバル化ってカネとモノは
 世界中自由に動き回るけど、ヒトはそうはいかない。
 企業からすればグローバル競争に勝つために人件費の
 安いところに行くのは当たり前だ、国内で雇用を確保するには
 人件費下げるしかないじゃないかって理屈になってる。
ー企業はグローバルかもしれないけど、人の暮らしはグローバル
 じゃないよな。生活コストの違うところと同じ基準で
 給料考えられちゃたまらんじゃないか。
ー衣料品にしろ、食品や工業製品にしろ規格化された大量生産品
 は安い値段でグローバルマーケットで売りさばいていかないと
 儲けがでない。われわれがそういう製品に頼って生活するのは、
 結局グローバルなコスト競争に自らを放りこんでるってことに
 なっちまうんだよ。
ーじゃどうすればいいんだ?
ーグローバルに対抗するにはローカルしかないんじゃないのかな。
 極力地元で作られた高い品質の製品で生活を成り立たせて
 いくんだ。
ーバカ言うなよ。まず収入が増えないとそんな優雅なこと
 言ってられないよ。何とか安いもの買おうと必死なんだから。
ーでもそれで今まで通りグローバルな大量生産品買ってると
 ますます収入は減っていくぞ。

2009年12月7日月曜日

美術の窓


ご案内です。
美術の窓』今月号(12月号)の「スケッチがもっと上手くなる」
という特集記事の中で、蔡さんの「通勤絵速」のスケッチが
紹介されています。
電車の中で、街角でどのようにスケッチをするか蔡さん自ら
披露しています。
蔡さんがスケッチする姿も写真で確認できますよ。
その中で紹介されている蔡さんのことばです。
「僕が描いているのはその人の一瞬だけど、その人にはその前にも
後にもその人の人生がある。毎日が違う人との出会いだから
面白いです。一日中ずっと電車に乗っていたいと思うくらい。
一年間続けたらその行為自体がアートですね(笑)。」
一度是非手にとってご覧になってみてください。

2009年11月8日日曜日

京都のタクシー


ー先週末、用事があって京都へ行ってきたよ。
ーもう紅葉していた?
ーもみじはまだだけどね、桜とかは色づいてきれいだった。
ー人が多くて移動が大変だったんじゃない?
ー道は混んでたね。でも京都はそんなに大きな街じゃないし
 タクシーが安いから、ついついタクシーに乗っちゃうんだよ。
ー地下鉄は限られてるし、バス路線は複雑だから、何てったって
 タクシーが便利ってわけね。
ーそれでつくづく思ったけど、京都の運ちゃんってよく
 しゃべるんだよ。
ーていうと?
ー乗り込むだろ、「ほな、どこ行きまひょ?」から始まって
 「どちらからおいでやした?」「どちらにお泊まりどす?」
 は常套で、天気の話やら今年は紅葉が早いとか、遅いとか
 どこそこでこんなことやってるとか、だれそれがこんなこと
 言ってたとか、ありとあらゆることしゃべるんだよ。
ーにぎやかそうだね。
ー10回タクシーに乗ったら、まあ9人はこうだね。
ーでもわずらわしく思うお客さんもいるんじゃないの?
ー東京じゃタクシーに乗ってから降りるまで一言も口きかない
 ことだってザラじゃないか。最初はちょっと面食らうけど
 運ちゃんとよもやま話している間に目的地に着くのは
 楽しいし、なんとなく安心できるもんだよ。
 東京じゃタクシーは単に移動の道具だけど、京都では
 コミュニケーションの空間として成り立ってるって
 感じがするね。
ーよその都市ではどうなのかしらね?
 東京流と京都流とどちらが一般的なのかしら?

2009年10月25日日曜日

向日葵三題


ー蔡さんの今度の展覧会では「生命の詩」(10月4日記事に画像あり)
 と題したひまわりの絵がすごく評判よかったそうよ。
 早くに赤丸が付いてたけど、これが欲しかった!っていう人が
 随分多かったみたい。
ーひまわりという生命の核がビッグバンを起こして、その粒子が
 宇宙に飛び散ってるって感じがする。とても鮮烈なイメージだね。
ー「ひまわり」っていうとゴッホが有名よね。
ーこちらも「生命感溢れる」って先入観があるけど、ぼくにはそうは
 見えないね。逆に打ちひしがれて、しおれていきそうな悲しみを
 感じるよ。
ーこれはアルルの「黄色い家」を飾るために描かれた絵でしょう。
 もうじきゴーギャンとの理想の共同生活が始まるって
 わくわくしながら描いたんじゃないの。
ーきっとそんな共同生活はうまくいきっこないって予感が
 あったんだよ。でもゴッホにとってその共同生活だけが生きる
 望みであったから、必死でそんな思いを打ち消して、いそいそ
 準備に励んでたんだ。でもAfterの予感が隠しようもない
 悲しみになって絵に表れてる。
 不幸にしてその予感は的中してしまうんだけどね。
ー確かに両サイドのひまわりはしおれてるし、ほかのも今にも
 崩れ落ちそうね。
ーところで最近、伊藤若冲「動植綵絵」の中の「向日葵雄鶏図」
 を見たよ。
ー動植綵絵は今、東京国立博物館で全30幅が展示されているわね。
ーこちらは色鮮やかにポーズを決めている雄鶏が主人公だけど
 周りの向日葵がすごく妖しいんだ。
ーどういうこと?
ー向日葵の内側に折れた花びらが食虫植物の触手のように
 今にも雄鶏に絡み付こうと、虎視眈々狙っている感じがしないか?
ーそう言われれば、花びらがねちっこい指みたいだわね。
ー花の真ん中の筒状の部分だって細胞がもぞもぞしてそうだし
 葉っぱも型取りされたような丸い穴やシミが妙に妖しい。
 朝顔だって花のまだら模様とか、つるの絡み具合とか
 妖しい息遣いを感じてしまうよ。
ー確かに、無垢な雄鶏を自分の体内に取り込んでしまおうと
 背後からヒタヒタ植物が迫っているって感じね。
ー若冲という人は寝ること、食べること以外はひたすら絵を描く
 単調な毎日だったらしいけど、心の中では描くことに
 どれほど狂おしい思いを持っていたか、ちょっと空恐ろしい
 気がするね。


ひまわり(損保ジャパン東郷青児美術館所蔵のもの)


向日葵雄鶏図

2009年10月21日水曜日

蔡國華展閉幕


昨日、京橋・金井画廊の「蔡國華展」が閉幕しました。
11日間の会期中、実に2000人を超える方々が会場を訪れ
熱心に作品をご覧くださいました。
蔡さん、金井さんともにただただ感謝、感謝とのことでした。
どうもありがとうございました。
簡単ですがご報告させていただきます。

2009年10月18日日曜日

タクシーと指輪とレストラン


加藤和彦さんが亡くなりました。
秋の青空の向こうに何があるのか見たくて
飛んでいってしまったのかもしれません。
『あの素晴らしい愛をもう一度』、同世代が集まり歌を歌う
機会があると、必ず最後はこの歌の大合唱です。
「あの〜」のところを唸る者、がなる者、叫ぶ者
みんなそれぞれその一瞬、自分の青春に還っています。

ぼくは加藤さんの『あの頃、マリー・ローランサン』という
アルバムを愛聴していました。
その中にこんな歌詞があります。

 友だちから きいてきた
 流行りの そのレストラン
 満員で断わられ
 途方に暮れた僕に

 「歩きましょう」と からませた 指と指に
 あの頃は いつでも
 ふたりの愛が
 優しく 往ったり来たり 若い日の思い出…
 (詞:安井かずみ 曲:加藤和彦 
  『タクシーと指輪とレストラン』より)

これっぽっちの情報と、あり余る思いを抱えて生きていた
そんな時代にふさわしいアーティストでした。
今はきっと安井かずみさんと腕を組んで Heaven's Avenue を
闊歩されていることでしょう。
ご冥福をお祈りします。

2009年10月12日月曜日

煌めく街


ー金井画廊の蔡國華展を見てきたよ。
ーどうだった?
ー人物、風景、静物、どの絵もみんな想像力がかきたてられて
 見飽きることがなかった。
 「煌めく街へ」(前回記事に画像掲載)とか、ドブロヴニクの
 街を描いた作品があったけど、赤い屋根がすごく印象的だったね。
ードブロヴニクってアドリア海の真珠っていわれるクロアチアの
 街よね。
ー海に面した家の屋根という屋根がみんな同じ赤い色で塗られて
 いるそうだ。太陽の光で屋根が輝いてるんだけど、蔡さんは
 屋根自体が光の粒子をはらんで自らきらきら煌めいている
 ように描いているんだね。
 屋根の煌めきはきっとその屋根の下にすむ人たちの心の
 煌めきなんだよ。
ー何世代にもわたって赤い屋根の景観を守るためには、いろいろ
 大変なことがあっただろうからね。
 真珠を輝かせているのは、人の心の営みってわけね。

蔡國華展の様子です。





 

2009年10月4日日曜日

東京・京橋で蔡國華展開催!


昨年に続き、京橋・金井画廊にて蔡國華展が開催されます。

 * 10月10日(土)〜 20日(火)
   11:00 〜 19:00 (最終日は 17:00 まで)
   会期中無休
 * 金井画廊 (☎03-5250-0860)
   地図は画廊HPの案内をご覧ください。

悠久の時間の中でそれぞれの生命を瞬かせている存在
の姿を是非ご覧ください。

Partner

煌めく街へ(アドリア海の真珠)

生命の詩

青林檎

2009年9月28日月曜日

クール・ジャパン


ー民主党政権になってどの大臣も自分の頭で考えたことをしゃべって
 いるから、内容の当否はさておき、その大臣が何を考えどうしようと
 しているかはよくわかるね。
 大臣が官僚のペーパーを見て意味不明のことをしゃべっていた自民党
 時代と比べ、これだけで随分風通しがよくなったと思わないか。
ー直接関係ないけど、鳩山首相の幸夫人の言動もユニークでいろいろ
 物議をかもしてるわね。
ー言動だけじゃなくてファッションについてもあれやこれや随分
 言われてるね。確かに外遊出発時のチューリップみたいなスカート
 なんか目立ってたもんな。
ーあれはコシノヒロコさんデザインのバルーンスカートなんだよ。
 裾の絞りが舞台衣装みたいで優雅じゃない。
 彼女はもちろん日本人デザイナーのものを着るっていう意識が
 あったでしょうけど、それ以前に自分はこれを着たいから着るんだ!
 って気っぷのよさが感じられるじゃない。なかなかいかしてるわよ。
ー王朝の昔から装いに関しては、日本はいつも世界の最先端
 だったからね。そういう意味じゃファッションデザインは
 クールジャパンの象徴だよ。
 これからは業界の人だけじゃなくて、国のリーダーたちも
 どんどん日本のファッションデザインに身をつつんで
 一皮むけた日本文化を世界の人に見せてほしいね。
 

2009年9月23日水曜日

彼岸花



ー庭の鉢植えの彼岸花が
 咲いたよ。
ーきれいに咲いたね。
ー不思議に思うんだけど
 彼岸花って、どの年でも
 ちゃんとお彼岸のときに
 咲くんだ。
 それに複数株あっても
 みんなほぼ同時に咲くんだよ。
ーだから彼岸花っていうんじゃない。
 群生して一斉に咲くのは見事よね。日高の巾着田とか有名じゃない。
ーそれって不思議じゃないか?
 で、調べてみたら彼岸花は種子で増えることができないんだって。
 どの株もさかのぼれば、中国から伝わったたった一球の球根に
 行き着くそうだ。
ー種で増えることができないって、確かソメイヨシノもそうだったね。
ーそう、どちらの花もみんな同じDNAを持っているんだ。
ーだから同じ場所の花は、一斉に咲いて一斉に散るのね。
ー日本人は一斉に咲いて一斉に散るって好きだからな。
 どこか妖しく、狂おしい気持ちにさせるものがあるんだね。

2009年9月13日日曜日

大地の芸術祭


ー新潟の越後妻有の里で開かれていた「大地の芸術祭」も今日で
 閉幕だね。
ー何、それ?
ー十日町、津南町周辺の街や里山を舞台に3年に一度開かれる
 アートの祭典なんだ。今回は約370の作品が広大な地域の
 あちこちに点在している。世界のあちこちから著名な
 アーティストも参加してるんだよ。
ー370も作品があるんだったら、とても見て回れないじゃない。
ー全部見ることないんだ。ガイドブックをパラパラ見て
 気に入ったものを順に尋ねていけばいいんだ。
 自分好みのアート巡礼の旅を作ればいいんだよ。
 地図を広げ、作品の場所をポイントし、どう回るか
 あれこれプランを練るだけでも楽しいよ。
ー一カ所にまとめて作品を展示してあったほうが、見るのも
 見やすいし、他の作品と見比べることが出来るから
 いいんじゃないのかな。
ーこの芸術祭の醍醐味は単に作品そのものを鑑賞することじゃ
 ないんだ。この地域の人たちは太古の昔から、畑をつくり
 田をつくり、山を切り開いて見事な棚田をつくり、深い雪
 に閉じ込められる冬は糸を紡いで織物を織ってきた。
 そうして綿々と続いてきた長い時間のなかで、どの人にも
 どの家にも、どの集落にも豊かな物語が紡がれてきた。
 でも今や過疎の現実の中でそうした物語を紡いできた
 コミュニティーは風前の灯火になっている。
 そんなところに多くのアーティストが入ってきて、
 それぞれがそれぞれの物語にインスピレーションを受けて
 その物語を世界の人が普遍的な形で感じられるような
 ものに作り替えてるんだ。
 アートは物語の発信装置で、主人公は妻有の里を豊かに
 色どって来た物語そのものなんだよ。
ーなんだか難しいわね。
ー妻有の里では地域が崩壊して物語が消滅する寸前にこの
 フェスティバルが始まって物語はつなぎとめられたけど
 今や日本の街や里からどれだけの勢いで物語が消えつつ
 あるかを考えると、何かとりかえしのつかないことが
 起こってる気がする。
 それに誰よりも物語を必要としているのは、実は都会の
 根無し草のぼくたち自身だからね。
 論より証拠、今回は「大地の芸術祭秋版」をやるそうだから
 行ってみたら。
ー「物語」なんて言ったってわたしはよくわからないけど
 秋は空気も食べ物もおいしそうだから、行ってみたいな。

わたしの「妻有アート巡礼の旅」写真はこちらをどうぞ。
大地の芸術祭_09

2009年8月30日日曜日

展覧会のご案内




軽井沢にて蔡國華作品展「旅人」が開催されます。
 * 9月1日(火)〜15日(火) 2009年
    9:30 〜 17:30
 * 軽井沢ギャラリー蔵
   長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2471-1
   離山公園内
初秋の爽やかな風の中、蔡さんの大作を含む作品を是非ご堪能
ください。


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2009年8月19日水曜日

さあ、選挙!


ーいよいよ、選挙だね。
ー民主党の政策には財源の裏付けがないって、自民党は責め立ててる
 けど、自分たちだって決して大きな顔はできないと思うけどね。
ーというと?
ー今まで、日本の公的債務残高は大体750兆円って覚えてきたじゃ
 ないか。それが財務省発表資料(注)によると、今年度末には
 800兆円を超える予想になっている。
ー日本の財政は危機的状況だってよく言うからね。
ーしかもこの資料によると過去3年地方の債務はほぼ横ばいで
 増えたのはもっぱら国債なんだよ。
ー国債だけで3年間で50兆増えたってわけか?
こっちの資料見るともっとすごいぞ。
 過去10年で日本の国債残高は220兆も増えてる。空恐ろしく
 ならないか。
ー確かに平成11年度から赤字国債が急速に増えてるね。
 でもずっと不況だったから仕方ない面もあるんじゃないか?
ーそうか?平成11年っていうと小渕内閣のときで確かに不況だった。
 それで史上最大のバラマキをやってめでたく景気は回復した。
 そして小泉内閣のときにイザナギ景気を超える戦後最長の好景気が
 始まって、つい1年前まで好景気だったハズだろ。
 史上最高益を更新する企業続出ってニュースになってたじゃないか。
ーそういえばそうだったな。今や夢、幻に思えるね。
ーボッとしてちゃダメだよ。この機会にって小泉さんは
 構造改革を旗印に「骨太の方針」とかで財政再建に手をつけようと
 したけど、結局赤字国債は同じように発行されてるんだよ。
ーそして今度の不況で史上最大のバラマキ第2弾てわけだな。
ー赤字国債がこれだけ急膨張したのは、財源がないのに歳出を
 優先しつづけたってことだろ。
 この10年、なぜこうなったかをもっとちゃんと説明してもらわないと
 いくら「責任力」って言ったって信用できないな。

 (注):こちらの資料の「国および地方の長期債務残高」を
     ごらんください。

2009年8月9日日曜日

Hiroshimajority


ー広島市の秋葉市長が平和宣言で、核廃絶を目指す私たちを
 「オバマジョリティー」って呼んだのが、ちょっと
 ひっかかってるんだよね。
ーオバマのプラハ演説にあやかろうっていうんでしょ。
 わかりやすいじゃない。
村上さんの「システム」と「個人」という対比からすると
 オバマの演説は言うまでもなく「システム」のことばだよね。
 今「システム」(ここではアメリカを頂点とする世界秩序)を
 脅かす最大の脅威は核爆弾が一部テロリストの手に落ちてしまう
 ことだろ。「システム」にとっては悪夢だよね。
 だから今あれだけアフガニスタンにしゃかりきになっている。
ー悪夢を現実にしないためには、核廃絶しかないってことを言いた
 かったわけだね。
ーそれは正しいけど、ただ「システム」の論理はそこから目と鼻の 
 先で、そんな悪夢を阻止するためだったらテロリスト集団に核爆弾を
 使ってもかまわない、ってことになってくる。
ーそれは仕方ないんじゃないの。
ー戦争では「システム」の論理が最大化され、「個人」の論理は
 最小化されるからね。でもその結果どんな恐ろしいことが
 起こったか、それがヒロシマ、ナガサキだったってことじゃ
 ないかな。
ー言いたいことがよくわからない。
ー「システム」の側から世界をみている限り、戦争はなくならないし
 核廃絶も出来ないってことだよ。
 戦争でどちらの側にいようと「個人」は致命的な打撃を受けるし、
 核爆発は一瞬だけど、その下は文字通りの生き地獄だ。
 たとえ「個人」がその地獄を生き抜けても、それから何十年、
 何世代にも渡って堪え難い苦しみを背負っていくことになる。
 ヒロシマでぼく達はそういうことを目撃している。
 どんな戦争でも「個人」にとっていい戦争なんてあり得ないんだよ。
 「システム」は強力だから、それに対抗するために個人ひとりひとり
 が余程自覚し、声をあげ、連帯していかないとダメだと思うんだよ。
 「個人」の連帯による多数派、これを「Hiroshimajority」と言っても
 よかったんじゃないか。広島にはその資格があると思う。
ー「個人」ひとりひとりの物語を大切にするってことだね。
 デザイナーの三宅一生氏がニューヨークタイムスに自分の被爆体験を
 寄稿しているけど、彼にもそういう思いがあったんだね。
 

2009年8月2日日曜日

エコ・シフトⅡ


ー日産が今度横浜に移転オープンする新本社のお披露目に
 来年市販する電気自動車を公開したね。
ー新しいクルマをゴーンさんが運転し、小泉元総理、
 松沢県知事、中田横浜市長を乗せて登場したそうじゃない。
 ちょっと臭くない。
ー日産=ルノーにとっては社運をかけた大プロジェクトだし
 県、市にとってもエコプロジェクトの目玉のひとつだから
 力コブも大きくなるんだよ。
ーエコカーじゃ日産はトヨタ、ホンダに比べて出遅れている
 って印象じゃない。
ーハイブリッドは所詮石油を燃やして走るクルマだ、
 日産は排ガスを出さない量産車の開発に経営資源を集中する
 というのがゴーンさんの方針だったからね。
 新しいクルマに「リーフ(Leaf)」って名をつけたところにも
 その思いがこめられてるね。
ーでも電気自動車は高いし、小さいし、簡単にドライブなんて
 できないんじゃないの?
ー今度発売されるクルマは5人がゆったり座れる大きさだし
 1回の充電で160Km走れるんだって。街乗りだったらOKだよね。
 値段もコアの電池はリースにすることで、同サイズのガソリン車
 並にするそうだよ。実際はどうか、来年秋の市販が楽しみ
 じゃないか。
ー私はたまにしかクルマ乗らないんだから、乗る時は楽しく運転
 できるクルマがいいな。

 ゴーン氏への関連インタビュー記事はこちら

2009年6月28日日曜日

ゆれる


ーちょっと、あのオジさんいやねぇ、酔っぱらってグイングイン揺れて
 はた迷惑たらありゃしない。
ーボーナスでも出て、ちょっと一杯やったんじゃないか。
 大目に見てやれよ。
ーいい歳して、ちょっと考えて飲めばいいじゃない。
ーボーナス出てほっとしたんだよ。揺れに揺れて「いつ解散するかは
 私が決めます。」って1年間言い続けて、いまだに決められない
 人のことを考えれば、かわいいもんじゃないか。

2009年6月21日日曜日

まどろみ


ーこうしてまどろんでる間にパックがやって来て、私に恋の媚薬を
 処方してくれないかしら。
 人生にはときめきが必要。いずれ目が覚めるってわかっていても
 それまでほんのひととき、ときめいて狂ってみたい。
 一夜の夢、一場の夢、今日は夏至。

2009年6月10日水曜日

風立ちぬ


ー辻井伸行くんがバン・クライバーン国際ピアノコンクールで
 優勝したって、快挙だわね。
ー彼の物怖じしないキャラクターも微笑ましいけど、お母さんの
 きゃぴきゃぴ感がいいよ。あの明るさが彼のピアノの音
 そのものって感じがするね。
ー彼は風が大好きなんですって。彼の演奏は「一陣の風」って
 表現がぴったりなんじゃない。爽快だけどすごく突破力がある。
ー考えてみればあらゆる芸術って風みたいなものかもしれないね。
 風なんてなくても誰もなんにも困らないけど
 毎日の生活に風がなければ、心はささくれだってだんだん
 枯れていきそうな気がするよ。
 

2009年5月31日日曜日

蔡國華展 東京で開催!


蔡國華展がまもなく東京・銀座で開催されます。
題してー艶やかな女たちー。
いつもの個展とは少々趣きを異にし、艶にして爽、魅惑あふれる
女たちが会場を彩ります。
是非ご覧ください。



*とき 
  6月9日(火)〜6月20日(土)
  12:00 〜 18:30 (日曜休廊)
  最終日 17:00 まで

*ところ 
 ギャラリー・しらみず美術
    中央区銀座5-3-12
    壱番館ビル4F
    ☎03-3575-0013

2009年5月24日日曜日

芍薬の花



ー爽やかな五月晴れを吹き渡る
 風が少しずつ湿気をはらんでくる
 今の季節、何の花が好き?
ーそりゃ、なんてったってバラだろ。
 姿、香り、百花の女王の
 名に恥じないよ。
 一面をピンクに染め変えて
 しまうさつきの花も見事だけどね。
ーわたしは芍薬が好き。
 清々しい白い花弁、ほのかに甘いのに決して媚びない香り
 華やかじゃないけど凛としたたたずまいが素敵だと思う。

2009年5月21日木曜日

もう飽きた?


ー今日もどの会社にも相手にしてもらえなかった…
 相変わらずハローワークは人であふれかえってるしな。
 1〜3月のGDPは戦後最悪だったって発表もあったし
 クビ切られてるヤツはいよいよ増えてるんじゃないのか?
 なのに年越しのころ派遣切り、派遣切りってあれだけ騒いでいた
 マスコミも最近雇用のことはこれっぽっちも言わないじゃないか。
 結局マスコミにとって事がどれほど重大かってあんまり
 関係ないんだよ。
 人にどれだけ受けるか、だけなんだ。
 「人のうわさも75日」、賞味期限切れの使い捨てってわけだ。

2009年5月20日水曜日

早く来い、来い、暑い夏


ー今年だけは明日からでも暑い夏になってくれないかな。
 神風吹かせて時間稼ぎしないと。
 重症じゃないけど患者の数は爆発的に増える、想定外のケースへの
 対策が定まってないことが、パニックの原因になりそうじゃないか。

2009年5月18日月曜日

新型インフルエンザ


ーマスクを買い足しときゃないとな。
 この分だと東京に感染が拡大するのも時間の問題だぞ。

2009年3月29日日曜日

九州初個展、開催です!



蔡さんの九州で初の個展が
開催されます。

* とき
  4月1日(水)
   〜 6日(火)

* ところ
  小倉井筒屋 (地図ご参照)
  ☎ 093-522-2525

* ご注意
  初日(1日)は関係者のみの
  内覧会とのことです。

展覧会のサブタイトルは
—時の詩—です。
そういえばこの女性像は
フェルメールの描く女性像とどこか響き合っている気がします。
本人はそんなの関係ないときっと言うと思いますが。
お近くの方、是非ご覧になってください。


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2009年3月22日日曜日

エコ・ギャップ


新聞に「京都議定書」の温室効果ガス削減目標6%を日本が達成する
 のは確実になったって書いてあってびっくりしたよ。
—ええっ、ウソでしょう!
 90年比温室効果ガスは逆に増加していて達成は困難っていう話じゃ
 なかったの?
—去年まではそういう話だった。ここに来て経済活動が急減速した
 結果、何もしなくても達成できるってことになったらしい。
 言われてみると極々シンプルな話で、簡単すぎてキツネに
 つままれてるような気分になるけど…
—新聞記事も「不況という環境対策」って書いてるわね。
 でも経済活動がこれだけ落ち込んで、やっと削減目標が達成できる
 っていうのも困った状況だわね。
—エコノミーとエコロジーの間でそれだけ大きなギャップがあったと
 いうことだね。
 この不況を契機に、エコノミーがエコロジーに近づくよう社会を
 変えないと、いずれ世界は行き詰まってしまうということじゃ
 ないかな。
—そうね。わたし達も何にどうお金を使うかよく考えないと
 いけないね。
 機能が同じなら少々高くてもエコロジーな方を買うとか、
 ハードじゃなくてソフト、モノじゃなくて心の領域により
 お金を使うとか、ね。

2009年3月20日金曜日

投票しよう!(2月後半スケッチの結果)


2月後半スケッチ投票しよう!の結果は以下の通りでした。

 2票 2月20日 ナマズになる(上に掲載)
 1票 2月16日 エルサレム奇譚
 1票 2月19日 ガラパゴスの宝探し
 1票 2月10日 甦れ!青いさくら
 
今回はいずれも3票に達しなかったので、「Reader's Choice」への
掲載は見送ります。

3月に入りブログの更新が滞りがちになり申し訳ありません。
実は3月からサラリーマン生活に復帰し、老いぼれ新人として
また慌ただしい日常が始まりました。
このご時世にこんな老兵を雇ってもらえたこと、感謝!感謝です。

そんなわけで忘れた頃のブログ更新となるかもしれませんが
末永く続ける積もりですので、今後もよろしくお願いします。
なお4月に入って3月分スケッチ投票しよう!を一括して
行う予定ですのでこちらもよろしくお願いします。

蛇足:AIGの幹部にはナマズを食わせたいところです。
   ナマズがもったいないか…

2009年3月17日火曜日

1%の夢


—経団連が社会貢献活動で「1%クラブ」ってのを作ってて
 それにならってぼくも「一人1%クラブ」を実践してるんだ。
—説明してくれなきゃ訳分かんないよ。
—経団連のクラブは利益の1%を社会貢献活動に支出しようと
 いうんだけれど、ぼくは年収の1%を寄付することを
 自分ルールにしてるんだ。
—それがどうして「夢」なの?
—若い時は、将来にいろんな夢を持ってるじゃないか。
 政治家になって社会をよくしたいとか、人を楽しませる芸術家に
 なりたいとか、お年寄りが生きがいをもって暮らせるお手伝いが
 したいとか、貧しい国の子どもたちの力になりたいとか…
—それで?
—働き出すとそれは文字通り「夢」でどっかに忘れてしまうもん
 だけど、自分の代わりにその夢を実践しようとしている人に
 1%を投資するんだよ。
—もう少し具体的に言ってくれない?
—まずそのためにいくら使うか決める。例えば年収500万円とすると
 5万円はそのために使うと決めるんだ。
 次にそれをどう使うか、投資先と配分を決める。
 例えば政治に興味があるんだったら、自分が共鳴できる政治家に
 2万円献金する、それから養護施設に2万円、美術館に1万円とか
 決めるんだ。今はネット上で豊富に情報が手に入るから、その中から
 自分の夢に近いのを探すんだ。
—なんだか面倒くさそうだけど。
—1%だけ自分と違う人生を生きられると考えれば、あれこれ探すのも
 楽しくて面倒なんて気分は吹き飛んじゃうよ。
—でも後で裏切られるということもあるんじゃないの?
—そこが大事なところなんだ。なけなしの自分のお金を使うんだから
 その先の活動はしっかりチェックする。活動報告書をしっかり読み
 ネットで活動状況を確認する。言いたい事があれば意見を伝える。
 そのことで自分も参加している気になれるし相手だって鍛えられる。
 自分のお金は自分の使いたいことにちゃんと使われているか
 毎年しっかりフォローするんだよ。
—なるほど、自分のお金が自分の夢に役立っていると思えば
 それはうれしいことだよね。

2009年3月9日月曜日

ETC助成金


ETC助成制度って出来たの知ってるか?
—いや、聞いてないなぁ。
—今度の、土日高速道路1000円ってのも、その他の料金割引
 も全部ETC搭載車だけが対象だろ。そこでETCを一挙に
 普及させようと、一定の条件を満たす新規購入につき
 5250円を補助するって制度なんだ。
—今、一万円以下の車載機もザラにあるから、数千円で
 買えるってわけか。土日にちょっと遠出すればモトが
 取れそうだね。
—ただし実施期間が3月12日から3月31日までとすごく短いし
 実施対象店も限られてるみたいだから、ダッシュしないと
 いけないよ。
—本当か、定額給付金はあれだけ騒いでいるのに、どうして
 こっちはあんまりニュースを流してくれないんだ?
 サンキュー、早速調べてみるよ。

2009年3月6日金曜日

クイーンメリー2の寄港


—最近のニュース見てると息が詰まってくるわね。
—ティーブレイクの話題だけど、今日横浜にクイーンメーリー2が
 初寄港してるんだ。わずか12時間の短い滞在だけどね。
—へぇ、クイーンエリザベス2は日本に何回か来て、とっても
 人気があったけど、クイーンメリー2というのもあるのね。
—QE2が引退してその後継客船がQM2なんだ。
 でも船が高すぎてベイブリッジをくぐれないから、横浜港自慢の
 大桟橋に接岸できずに、大黒ふ頭っていうコンテナ船専用
 ターミナルに接岸してるんだ。
 殺風景で乗客の人にはちょっとお気の毒だけどね。
 ちなみにベイブリッジの高さは、QE2がくぐれる高さに
 決められたって聞いたことがあるよ。
 当時は世界最大の客船だったからね。
—優美な姿はQE2そのままね。
 こんな船でクルーズするとお高いんだろうなぁ〜
—今回は世界一周の途中で寄ってるんだけど、全行程乗ると最低でも
 250万円からって紹介されてたよ。上は2000万円以上なんだって。
 調べてみると寄港地から寄港地単位で乗ることもできて
 シドニーから横浜に来てるんだけど、この区間は8泊、普通船室で
 2400ドル、横浜から先ドバイまでは15泊、4400ドルってなってた。
 結構人気らしいよ。
—世の中様々ってことだね。

蛇足の注:ベイブリッジの高さは56メートル、QE2の海面からの
     高さ52メートル、QM2は62メートル、微妙です。

2009年3月4日水曜日

ゾンビ銀行


—FRBのバーナンキ議長が「現時点で米大手銀にゾンビ金融機関が
 あるとは思わない。」と発言したそうだね。
 「ゾンビ」とはまた穏やかじゃないな。
—ベーカー元財務長官が英フィナンシャルタイムスに寄稿して
 「死に体のゾンビ銀行を延命させて『失われた10年』を招いた
 日本の二の舞になる」と警告したことが伏線にあるんだ。
 不良債権処理を先送りに先送って、実態は破綻しているのに
 生かされていた当時の一部の日本の銀行をアメリカの専門家は
 「ゾンビ銀行」って呼んでるんだよ。
—「ゾンビ」とはひどい言い草だね。
 処理に時間がかかったのは確かだけど、こんなあからさまな
 言い方するのか?
—アメリカもいよいよ余裕がなくなって、なりふり構って
 られなくなったのが、こんなあからさまな言い方に
 表れてるんだろ。
 公的資金注入してるのに、赤字が兆円単位で増えていくんだから
 まさしくゾンビじゃないか。
 日本をダシに使って、不良債権分離っていう強行外科手術を
 始めるゾ、ってサイン出してるんだよ、きっと。

2009年3月3日火曜日

エルサレム奇譚—後日談—


—村上春樹さんのエルサレム賞授賞式記念講演の全訳
 毎日新聞に掲載されたわね。
—イスラエル批判っていう報道が先行して、一体講演の真意は
 どこにあったんだろうって思ってたけど、講演全体を読むと
 クリアだね。
—そうね、それぞれが独自性を持った個人の尊厳に対する
 信仰告白ってことにつきるわね。
—これは彼の作品に一貫して流れるテーマだから、彼の読者には
 違和感なく受け入れられる話だね。
 エルサレム賞の選考委員も、それを前提で授賞しているはずだから
 目の前でこの講演を聴いても、そんなに驚かなかったと思うよ。
—でも彼は壁と闘えるペンという武器を持っているからいいけれど
 何も持たない私たちはどうすればいいのかしら?
—う〜ん、ってうなってしまうけど、でも政治っていう「壁」に
 対して、ぼくたちがこれに立ち向かえる数少ないチャンスは
 やっぱり選挙だよね。
 普段からよくよく政治の動き、政治家の言動を見極めて、考えて
 考えて投票しないと、結局痛い目にあうのは自分たちだって
 今度という今度ほど身にしみたことはないからね。

 (オリジナルの英文原稿はこちら→ Part1, Part2

2009年3月2日月曜日

桜餅



桜餅を買って行って
 おひな様にお供えしようっと。
—今ではよく知られてるけど
 関西で桜餅っていうと
 関東の道明寺なんだね。
 じゃ関西で関東の桜餅は?って
 言うと、そもそもそんなもの
 売ってなかったんだ。
 今は知らないけど。
—あら、それはつまんないわね。
—それはそうだけど、東京へ出てきた最初桜餅を見た時は混乱したよ。
 今まで見たことのないお菓子に「桜餅」って名前が付いていて
 「桜餅」が「道明寺」ってなっている。
 あれぇ、今までぼくは日本語を間違ってたのかな?本当の桜餅を
 知らずに、そうじゃないのを「桜餅」って呼んでたのかな?って
 ちょっと怖い思いをしたもんね。
—丸餅と角餅もそうだけど、伝統的な食べ物で西と東で違うものって
 結構あるよね。
—関東の桜餅は江戸時代の長命寺餅から由来しているそうだけど、
 関西の道明寺の原型は平安時代までさかのぼる可能性がある
 んだって。桜餅ってお菓子の中に、日本文化の異なった流れが
 流れ込んで来ているって考えると、いよいよ豊かな気持ちで
 桜餅を味わえるってもんじゃないか。