2010年3月14日日曜日

パルス


長谷川等伯展行きました!40分待ってやっと入れたよ。
ーそれなら運がいい方じゃない。60分待ち、70分待ちなんて
 ザラみたいよ。
ー入ってからもすごいよ。展示ケースの前に人垣が二重、三重に
 なってるから、人波に揉まれるか遠巻きにして下の方を見るのを
 断念するか決断しないといけない。ただ閉館30分前になると
 人は大分減るから、じっくり見るにはこの時間帯がお勧めだね。
ーそれで、作品はどうだったの?
ー等伯の後期の作品ってすごく臨場感があるんだ。単に迫真の
 写実っていうんじゃなくて、自分がその場にいてその状況を実際に
 体験している感覚になるんだ。ちょっと3D映画と似た感じかな。
ーどうしてそんな感じになるのかしらね?
ーそう、どうしてそんな感じになるのか考えながら見ていたんだけど、
 例えば「萩芒図屏風」って作品がある。
 萩とすすきがそれぞれ秋風の中でそよいでいる、それだけの作品
 だけど、でも同じ風に吹かれても自然の中では萩もすすきも
 一本一本皆そよぎ方が違うじゃないか。あるものは激しく
 そよいでいるし別のは穏やかに揺れているし、中には他と違う
 方向にそよいでいるのもいる。それでも叢として眺めるとやっぱり
 同じ風にそよいでいるのがわかるだろ。
 等伯は画面の中でそれをやっているんだよ。
ーつまり?
ー等伯の萩もすすきもどれ一本として同じそよぎ方をしていない。
 それぞれ微妙に違った揺らぎ方をしてるんだけど、でも全体と
 してみるとそこに吹く風が直感的に感じられるんだよ。
ーそれって究極の描写力じゃないの?
ー自然というのはひとつひとつが皆別々の個性を持って
 バラバラのようでいながら、全体として大きなハーモニーを
 保っている、それが一番すごいとこじゃないか。
 その自然の息吹、生命の拍動とじぶんの命の拍動が交感
 しあっているっていう研ぎすまされた感覚がないと
 あんな絵は描けないと思う。技術の問題じゃないんだよ。
 
「松林図」についてはかつて拙文に書きましたが、今回展覧会を観て
等伯は歳を重ねるほど過激にアヴァンギャルドになっていくのに
改めて驚きました。

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