2008年10月27日月曜日

アフガニスタンの農村から


今日から読書週間です。「週間」といいながら実は文化の日を中心に
前後一週間づつ、あわせて二週間が「読書週間」なのだそうです。
今度調べて初めて知りました。お恥ずかしい。
という訳で今日は小さな本のことを書きます。
本の題名は「アフガニスタンの農村から」
大野盛雄著、岩波新書(青版)、1971年発行、
残念ながら現在Amazonに在庫はないようです。
今から30年ちょっと前、大学の文化人類学の課題で読んだもので
著者がアフガニスタンで行ったフィールドワークの記録です。
その後頭の中には、厳しい自然環境の中でたくましく生きる農民の
個性的なイメージだけが残り、中身はすっかり忘れていたのですが
この夏の痛ましい出来事をきっかけに再度読んでみました。
改めて感じたのは、当時(ソ連侵攻前)のアフガニスタンでは
国家というよりむしろ部族共同社会の中で、農民達は貧しくとも
古来からの秩序環境に守られて、自分のポジションをしっかり守り
明日への不安を感ずることなく生活できていたということです。
面白い条があって、日本から入った調査隊を見て、村人たちが
口々に村長に確認したことが3つあったといいます。
1.あの者たちは書物(=聖典)を持った人間なのか。
2.酒は飲むか。
3.羊をたくさん連れた民か。
この質問は彼らが重視する価値をストレートに反映しています。
聖典を忠実に守るような人間でないと信用できない。酒を飲んで
堕落した生活を送っているような人間ではだめだ。羊(=経済力)を
しっかり持っていることも大事だ。
このような価値観を持った人たちの生活がどのようなものであったか
容易に想像できます。そしてこのような価値観で結ばれた人たちが
共同で営む社会だったから、厳しい自然環境の中で生活が成り立って
きたともいえます。
その後ソ連が侵攻し、長い内戦があり、アメリカの標的にされ
この本の中に生きていた農民達にどんな未来が待ち受けていたのかと
考えると胸が痛みます。
どんな争い、紛争、戦争でも、それに巻き込まれた社会の秩序は
破壊され、人間は裸になって動物にされてしまう、
平和な社会の生き生きした人間群像のレポートであるだけに
今読むとそのことを強く感じさせる本となっていました。

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